二十数年前、エサ釣りで好釣した時から、西川には頻繁に出掛けた。フライフィッシングを始めた当時に、一番足繁く通った川である。
フライの師匠である、清里で喫茶店モスバックを経営する林 勝美氏に教わったウイングとテイルにカーフテイルをたっぷりと使った、#12ロイヤルウルフと言う大きなフライを持って、西川に入った。
道路脇にトタン屋根の倉庫のあるすぐ下のポイントで、潜水艦が浮上してくるような迫力で、尺を越す大イワナがロイヤルウルフを襲ったが、合わせ遅れ。春うらら5月の日中の出来事だった。
その頃の西川は、今よりも遙かに水が清冽で、千曲川出合から2番目の西川橋と言う木橋下のポイントは、大きなナメ底になっていて魚が走り回るのが良く見えた。橋の上からラインをかなりのばしてフライを落とすと、そのフライめがけて数尾の良型がライズし、他の魚もナメの上をざわめき、走り回る。ドラグがかかってしまい魚は釣れなかったが、魚影の濃さに驚かされた。
その年の9月の禁漁間際にも、西川を訪れた。 友人が木橋上流のコンクリートブロックの脇で、良い釣りをしたので、私も、木橋下流にあるコンクリートブロックを狙った。
ブロックに沿った速い流れで、まず1尾、22㎝のイワナ。だが、後が続かない。
薄暗くなってきたので、このポイントを最後と決め、粘ってみることにした。
流勢から外れたブロック脇の三角点には、まだフライを落としていない。よく見るとその一番奥のスポットで小さな飛沫が上がっている。最初は、打ち寄せる水が跳ね返って起きている飛沫かと思ったが、もっと垂直な跳ね方だ。ライズだ!私ははやる気持を押さえて、そのスポットにロイヤルウルフの#12を落とした。
ピシャッ!に合わせると、バタバタッと手元に24㎝のイワナが飛び込んで来た。当時は、4Xのティペットを使っていたので、まるでテンカラ釣りのような取り込みである。たった今釣れたポイントを眺めると、ふたたび全く同じ場所で、ライズが起きている。再度キャスト。 ピシャッ!バタバタッ!てな調子で今度は22㎝。三たび変わらず起きるライズで、また1尾。まるで、コンクリートブロック下の大きなエゴで、一列に並んだイワナ達が、次々と順番にライズしているのではないかとさえ思った。
結局、一点で起こるライズで5尾のイワナを釣った後、真っ暗な橋の上から呼ぶ友人の声を聞いて、竿をたたんだ。
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